ストーリー
「本当に幸せになっていいのか……」
13歳の時に友達の犯行で妹を亡くした新聞記者の月野木薫。結婚式も控え、友人・岡田の子供たちの世話を手伝い、幸せな日々へ期待を抱く一方、亡き妹に対する後ろめたい気持ちが募る。そんなある日、中学校の屋上から女子中学生が転落死する事件が発生。薫が突き止めた加害少女は、岡田の娘・茜だった。「……茜ちゃん、中2でしたよね」「それがどうかしたんですか?」「14歳かどうかが重要なんです。刑法では14歳未満の少年少女には刑事責任能力がないとされているので刑罰の対象にならないんです……」「……茜、来週誕生日です。まだ13です」無言の帰宅を果たす被害少女。兄のように慕われていた香川晃は堪えきれず嗚咽する。彼もまた、薫の妹を殺害した過去を持つ元加害少年だった。運命に引き戻された薫と晃は、少年期とは逆の立場でその悲しみを知る。
そして止まった時計の針を動かすように、二人は再会することに……。
コメント
今の世の中を生きる我々が重く受け止めなければならないことを鋭く訴えかけてくる、作品全体から言葉にならない叫びが聞こえたように思います。 許されるべき人、必要以上に苦しんでいる人、そういった人が生まれる原因はどこにあるのか。本当の意味で可哀想な人とは、人を傷つけることで己の何かを満たしている人だと感じさせられました。 この映画に込められた想いが沢山の方に届きますように。
林遣都(俳優)
犯罪を犯した側と、その犯罪の被害者家族。どちらの傷も憎しみも時間は解決してくれない。逆に深くなっていくことさえあるのだとこの映画は気付かせてくれる。本当に人が人を赦す、ということはどういうことなのか。切ない痛みと希望を、登場人物と同じ地平に立ち、誠実に汲み取った新人監督に拍手を送ります。
成島出(監督)
底辺を這いずり廻る者たちへの共感。
絶望だけの人生が折り重なった先に待つものは、
ただの死、それとも──。
島田荘司(作家)
私の現場で、島田は常に冷静に脚本を分析し、時に彼独特の大胆な見解を示し、作品への寄与をしてくれた。そんな彼のオリジナル作品に期待せざるを得ない。案の定、本作は一筋縄ではいかないギミックが敷かれている。昭和の風情が懐かしく、一見今時の映画ではない気もするが、鬼気迫る後半の展開は紛れもなく今でないと撮れない映画だと感じる。
篠原哲雄(監督)
人間はどういう生き物なのか?とあの頃からずっと考えている。
監督は出会った8年前とまったく変わらない。映画を観てそう思いました。
キャメラと若い役者たちの仕事は素晴らしく、不知の自覚からの苦悶が刺さります。
あの屋上に、あの部屋に、自分も一緒に居たような錯覚を起こしそうになる。
テミスの持つ天秤では測れない罪がある、そう感じました。
深川栄洋(監督)
辛い。正解がない問題に辛い。それぞれのいたみ、それぞれの救い、きっとどこかに救いがあるはずだと願い思うその心が映画には描かれ、見た人がそれを心から考える。
そして私も考える。いつかの救いを求めて。
尾野真千子(俳優)
順不同